| 妊娠・出産・産褥期のメンタルヘルス  | 
    
    
      | 女性のライフサイクルの中で、妊娠は新しい生命の誕生に対する喜びや期待とともに、身体の変化と分娩や育児に対する不安が同時に起こり、メンタルヘルスに不調をきたしやすい時期です。一般的には妊娠初期にストレスが高まり、中期にかけて一時的にストレスは低下しますが分娩時期が近づくと再びストレスが高まり、さらに産褥期(育児期)になると、育児の疲れや心配事・身体の変化などストレスが蓄積しやすい時期になります。  | 
    
    
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      |  マタニティーブルーズ  | 
    
    
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      産褥3日〜10日頃におこる一時的な軽い抑うつ(気持ちが沈んで晴れ晴れしないこと)や涙もろさを主な症状とする症候群(同時に起こる一連の症状のこと)です。海外では褥婦さんの70%前後に生じているという報告がされていますが、わが国においては最近の報告で30%前後であるが増加傾向にあるとされています。  | 
    
    
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      | 症状 | 
      軽度の抑うつ、涙もろくなる、不安感、集中力の低下、思考力の低下、不眠、  | 
    
    
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      | 診断 | 
      褥婦さんの、表情・授乳の様子・着衣の乱れなど普段と違う状況の判断、睡眠状態などを注意して観察していきます。またSteinのマタニティーブルーズの自己質問票というテスト方法もあります。  | 
    
    
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      | 治療 | 
      ほとんどの場合薬物による治療は必要なく、授乳を含めた育児行動に余裕を与えるなどの休養や必ず自然に軽快するというスタッフからの心理療法などで治ります。不眠などの訴えがあれば睡眠薬を処方し、分娩時の傷などが痛く十分な睡眠が取れないときには鎮痛剤を使用します。通常2週間以内に自然に軽快します。 
      しかし、不眠、抑うつ、自責感(自分で自分の過ちをとがめること)、新生児への無関心などの症状が2週間以上持続する場合は産後うつ病を考慮する必要があります。 
       
      ★Steinのマタニティーブルーズの自己質問票を見る 
      (各項目の数字と「はい」を1点として、合計が8点以上でマタニティーブルーズを経験したものと判定します。)  | 
    
    
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      | 産後うつ病  | 
    
    
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      出産後1〜2週間から数ヶ月以内に発症する「うつ病」を産後うつ病といいます。一般的に褥婦さんの10%前後に発症するといわれ、子供さんに病気がある場合には発症頻度は20〜30%に上るといわれています。  | 
    
    
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      | 原因 | 
      現在明確な原因は明らかになっていませんが、脳内伝達物質や妊娠・分娩・産褥というめまぐるしいホルモン環境の変化、育児環境、遺伝的要素などが関与しているといわれています。また以下のような場合発症の危険性が増加します。 
      ・過去に精神科に通院したことがある 
      ・妊娠中にうつ病の診断がついた 
      ・妊娠や出産に対する不安の訴えが持続している 
      ・夫のサポートがなく、夫婦関係が極めて悪い 
      ・シングルマザーになる妊婦 
      ・自分の家族や友人などからのサポートが少ない 
      ・今回の妊娠前後から出産までに経験した精神的に辛いライフイベント 
      ・マタニティーブルーズの症状が著しい  | 
    
    
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      | 症状 | 
      無事に出産を負わせたにもかかわらず、涙ぐんだり気分が沈みがちになり疲労感から育児や家事に支障をきたすようになります。その後妻として母親として夫やわが子に申し訳なくいなくなった方がいいと思い始めます。以下に個々の症状をあげます。 
      不安感、疲労感、不眠、食欲不振、喜びや興味の消失、思考力の低下、集中力の低下、過度の罪悪感と自殺願望、家族に対する愛情の低下、母親としての自信喪失、などです。  | 
    
    
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      | 診断 | 
      産褥うつ病のお母さんは自分のうつ状態を周囲にあまり訴えず、わが子の体重増加不良や母乳が不足していないかなどと過剰に心配することがあります。このような場合にも産後うつ病を疑う必要があります。現在は英国で開発された「エジンバラ産後うつ病質問票」というスクリーニングテストがあり20ヶ国語以上に翻訳され、わが国でも使用されています。  | 
    
    
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      | 治療 | 
      始めに「親になったんだから、しっかりしなさい!」などと叱咤激励することは、産後うつ病の場合には絶対にやってはいけません!! 産後うつ病の半数以上は軽症です。多くの母親は母性本能があり必死で育児を続けようとしています。周囲の人々がうつ病であることを認識して情緒的ならびに実質的なサポートをしてあげることで、症状は軽快しますが、精神科医による抗うつ剤などの治療を要することもあります。 
       
      ★エジンバラ産後うつ病質問票を見る 
      (各項目の数字を合計して9点以上であれば産後うつ病を疑います)  | 
    
    
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      | 産褥精神病  | 
    
    
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      分娩後2〜3週で発症することが多く、産褥期の精神障害の中でもっとも重篤です。  | 
    
    
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      | 症状 | 
      初発症状として、不眠症やうつ状態などで始まり、次第に幻覚や妄想(もうそう)、錯乱(さくらん)などが起こります。しかし症状は変化しやすく不安や困惑などを伴うこともあります。 
      さらに悪化すると、自殺願望よりは、「赤ちゃんを殺してしまいたい。」という願望を持つようになることがあります。  | 
    
    
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      | 治療 | 
      精神科専門医の診断が必要です。診断結果によっては、入院治療や一時的にお母さんから赤ちゃんを隔離する必要もあります。  |