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 胞状奇胎(絨毛性疾患) 
 絨毛とは、妊娠初期子宮内膜に着床した際の受精卵表面に形成される組織で妊娠経過と共に胎盤と卵膜になります。この絨毛の発生過程において正常の発育をせずに絨毛内に水分の貯留が起こってしまう状態(嚢胞化)を胞状奇胎(絨毛性疾患)といいます。頻度は全妊娠の約0.07%程度とされていますが胞状奇胎処置後も続発変化として転移や悪性化することも有り厳重なフォローアップが必要な疾患です。 
   
分類と原因 以下のように分類されています。
 
@全胞状奇胎  胎児成分を認めず、全ての絨毛が嚢胞化しているもの
A部分胞状奇胎  胎児成分を認め、絨毛の嚢胞化があるもの
B侵入胞状奇胎  胞状奇胎の組織が子宮筋層の中にまで入っていってしまうもの

以前までは、絨毛の一部が何らかの原因で嚢胞化して発生すると考えられて来ました。しかし最近は細胞遺伝学の進歩により全胞状奇胎と部分胞状奇胎はまったく違うものである事が明らかにされました。正常のヒトの染色体は♂・♀双方のゲノムから構成された2 倍体(2 セット)からなります。

★ゲノム=生命体中に存在する遺伝子の1セットのこと

全胞状奇胎
1ないし2個の精子が卵子に受精し受精卵が細胞分裂を始めますが、この時に卵子のゲノムが不活化してしまい発生する雄核発生です。(精子のゲノムのみで卵子のゲノムが無い)

部分胞状奇胎
2 個の精子が1 個の卵子に受精して発生する3 倍体です。(精子2 セットと卵子1セットの計3セット)
 
   
症状と診断法 日本産婦人科学会の診断基準によれば「肉眼的に絨毛が嚢胞化して認められるもの(絨毛短径が2mm を超えるもの)を胞状奇胎(hydatidiform mole)といい、このうち一部の絨毛が嚢胞化して認められるものを部分奇胎とする。胎児成分を認める時は肉眼的に全ての絨毛が嚢胞化しても部分奇胎とする。」とされています。 
   
臨床症状 胞状奇胎に特有な症状は有りません。
@正常妊娠に比べて「つわり」が強い
A不正出血がある
B正常妊娠に比べて子宮が柔らかく大きい
C胞状奇胎の約30%〜40%に卵巣に黄体嚢胞を認める事がありますが、特に治療はせず経過観察をします。

@は双子や多胎妊娠などでもあります。
Aは切迫流産や流産などでもあります。
Cは正常妊娠にも確認する事があります
 
   
検査  @超音波検査 子宮内妊娠部位の絨毛が多数の嚢胞を形成していることを確認する。
A尿検査 尿中hCG の定量検査により50 万〜100 万mIU/mL で疑い、100 万mIU/mL 以上でほぼ確定。
BMRI 腫大した子宮内に多数の嚢胞を確認する。

 

こちらの超音波写真もご覧ください。
   
治療  胞状奇胎を確認した場合は、手術的に除去します。初回手術から1週間後に再手術を行ない子宮内に胞状奇胎の残存の無いことを確認します。もしも残存があった場合には、奇胎組織の子宮筋層内への侵入を考える必要が有ります。(侵入胞状奇胎)侵入胞状奇胎を疑った場合は、化学療法や手術療法(子宮摘出術など)を考慮します。

★術後のフォローアップ
胞状奇胎で大切な事は、胞状奇胎の細胞自体は悪性では無いのですが子宮内に留まらず、肺や脳に転移する事があり、ある時突然「絨毛癌」に変化することがあるのです。

1stフォローアップ
主に、胞状奇胎除去手術後の「侵入胞状奇胎」と全身組織への「転移」は、6ヶ月以内に起こるといわれているため、それらを早期発見するためです。
@尿中hCG や血液中hCG-β を定期的に測定し、再上昇の無いことを確認します。

Aレントゲン撮影、CT スキャンやMRI検査などで転移の検索をする。

B基礎体温表をつけて卵巣機能のチェックをします。

術後6ヶ月〜2年間位、尿中hCG や血液中hCG-β 検査結果が測定感度以下までさがり再上昇の無いことを確認します。測定の間隔は適時延長します。

2ndフォローアップ
主に、1stフォローアップ後の「絨毛癌」発症の早期発見のためです。
@血液中hCG-β を定期的に測定し、再上昇の無いことを確認します。

A基礎体温表をつけて卵巣機能のチェックをします。

血液中hCG-β 検査結果が測定感度以下で再上昇の無いことを確認します。測定の間隔は適時延長して行きます。部分胞状奇胎で術後2年間、全胞状奇胎で術後5〜7年間は、フォローアップが必要だといわれています。

★再妊娠の許可時期
以前は、胞状奇胎後2年間は避妊指導するようにいわれていましたが、超音波検査やhCG 測定の進歩などによってフォローアップが順調にいっていれば早期妊娠を許可するようになりました。さらに胞状奇胎後に早期妊娠したからといって悪性化する頻度にも差がないことが明らかにされました。妊娠時期に関しては、個人の状況にもよりますので、許可は主治医とご相談下さい。奇胎後の妊娠が再度奇胎である可能性は1%前後といわれています。

「再妊娠後も、胞状奇胎後フォローアップは必要なことをお忘れなく!!」 

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