|  妊娠悪阻  | 
    
    
       妊娠5週頃より始まる悪心(気持ちが悪い・はきけ)、嘔吐、食欲不振、嗜好の変化などの消化器症状で「つわり」と呼ばれています。 
      この症状は早朝の空腹 時に強く、全妊婦さんの50〜80%におよび妊娠12〜16 週頃までには自然消失します。 「つわり」と「悪阻」の違いは日本産婦人科学会では「"つわり"
      の症状が悪化し、治療を必要とする状態になった場合を悪阻という。」と決められています。 
      また妊娠初期に「つわり」があるために十分な食事が摂れない場合もありますが、胎児の発育に影響を及ぼすことはほとんどありません。  | 
    
    
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      | 原因 | 
      妊娠悪阻の原因は、妊娠に伴う内分泌の変化・代謝の変化・精神的な変化などによると考えられています。 
      @ 内分泌の変化 
      ★ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG) 
       妊娠検査はこのhCG が尿中に増加することにより判定します。hCG は妊娠すると増加し続けて妊娠8〜12週でピークに達します。このhCG の増加と妊
娠悪阻の症状の状態が一致している為、また双子(多胎)妊娠や胞状奇胎ではhCG は通常の妊娠に比べて増加し悪阻症状も強く出ることから、hCG やその関
連物質が関与していると考えられます。 
       
      ★チロキシン(T4) 
       甲状腺ホルモンの一つの遊離チロキシン(fT4)が、悪阻患者さんの40〜70%に高値を示したことが確認されています。 
       
      ★卵巣性ホルモン 
       妊娠初期に活発に卵巣から分泌されるプロジェステロンやエストロジェンという女性ホルモンによるという考えも有ります。しかしつわりの無い妊婦さんとホルモンのレベルにはあまり差が無かったという報告も有ります。 
       
      A 代謝の変化 
      妊娠により母体内のたんぱく質代謝が変化する為に、ビタミンB6の欠乏が嘔吐を誘発するといわれています。 
       
      B 精神的な変化 
      妊娠という精神的ストレスに上手に適応できない場合に、このストレスによって不安な精神状態になり妊娠悪阻の発症に関与していると考えられています。  | 
    
    
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      | 症状 | 
      いわゆる「つわり」によって嘔吐の回数が増加すると、唾液や胃液による体内の水分や電解質の喪失量も増加します。さらに食事を取れないことにより水分や電解質や栄養状態も悪化してしまいます。 
      ★一般的「つわり」の症状 
      唾液量の増加、吐き気、嘔吐、全身倦怠感(だるさ)、頭痛、ねむけ、食欲不振、嗜好(食べ物の好み)の変化などが挙げられます。 
       
      ★妊娠悪阻とは、「つわり」の症状が憎悪して以下のような状態に陥った場合です。 
      @脱水症  
      A体内の電解質の異常  
      B栄養状態不良  
        ・・・の三つの全身状態に要約されます。 
       
      ★妊娠悪阻を症状から4期に分けることが出来ます。 
      第1期 
       臨床検査の値は全て正常の状態ですが、嘔吐の回数が1日5回以上になり、舌、唇、皮膚などが乾燥し体重が減り始める。 
       
      第2期 
       上記第1 期症状に加えて、嘔吐回数が増加するため胃酸の喪失などにより体内の電解質バランスが崩れ始めます。やや呼吸が浅く頻回不規則になります。 
       
      第3期 
       食物が摂れなくなるために糖質欠乏となり体内に蓄積されているタンパク質や脂肪を原料に糖質産生するようになり、その副産物である「ケトン体」が尿中に排泄され始めます。さらに脱水状態も加わり体重減少は著明になります。 
       
      第4期 
       上記第3 期症状が増悪すると脱水で血液の濃縮が進み、末梢循環障害や血栓症(血液が血管の中で固まってしまう)が起こり、脳神経症状が発現します。さらにビタミンB1欠乏によりWernicke 脳症という致死に至る症状も有ります。 | 
    
    
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      | 治療  | 
      症状の第1期、第2期は、自宅で治療出来ます。先ず嘔吐する事を恐れないで下さい。恐れる事により精神的に悪循環に陥ってしまいます。検診で胎児を確認
している場合は「つわりがあるのは、赤ちゃんが元気な証拠!!」と割り切って下さい。次に一番飲み易い飲み物を少しずつ頻回に分けて1日総量で大きなペッ
トボトル1本位飲んでください。「つわり」を感じ始めると1回の尿量が減少し徐々に回数も減ってきます。この尿量や回数が増加し始めるまで水分補給を続けてください。 
      水分補給を続けても症状が軽快せず、返って水分も飲めなくなったような時には、栄養障害・代謝障害・脱水などの改善を目的とした点滴が中心になります。また精神医学的な面から、心身の安静を目的に入院治療が必要になります。点滴は、尿中の「ケトン体」が陰性になるまで1
日1000〜3000ml の点滴に ビタミンB群・ビタミンCなどを追加して行います。また第4 期になると、人工妊娠中絶も医学的見地から必要になる事も有ります。  | 
    
    
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      | 簡易自己診断法 | 
      
      
        
          
            | 症状\点数 | 
            0  | 
            1  | 
            2 | 
            3 | 
           
          
            | 悪 心 | 
            なし | 
            1〜4回/日 | 
            5〜10回/日 | 
            常にある | 
           
          
            | 嘔 吐 | 
            1〜2回/日 | 
            2〜3回/日 | 
            4回以上/日 | 
           
          
            | 食欲不振 | 
            半分以上食べられる | 
            1/3位食べられる | 
            ほとんど食べられない | 
           
          
            | 唾液分泌 | 
            チョット増えた | 
            だいぶ増えた | 
            我慢できないほど増えた | 
           
          
            | 口渇 | 
            チョット増えた | 
            だいぶ増えた | 
            我慢できないほど増えた | 
           
        
       
       
      0〜3点  軽症 食事や水分の摂取に心掛けてください 
      4〜5点   1日の尿量を気を付けて下さい。尿量の減少は症状悪化のサインです。 
      5〜10点  一度病院でチェックしてもらいましょう。 
      11点以上 入院治療が必要です。  |