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 母乳と粉ミルクについて
 赤ちゃんの栄養の基本は母乳栄養であることは、いつの時代においても変わりありません。
実際母乳はどのように優れているのでしょうか?母乳分泌の基本から母乳育児そして粉ミルクとの違いについて説明いたします。
   

母乳分泌に関係するホルモンについて

1)胎盤性エストロゲン 胎盤で作られます 乳管のの発達と、下垂体でのプロラクチン分泌を促進します。
2)胎盤性プロゲステロン 胎盤で作られます 乳腺の発達を促進します。
3)プロラクチン 脳(下垂体前葉)
で作られます
乳腺の細胞に作用して乳汁を作らせる。
4)オキシトシン 脳(視床下部)
で作られます
乳房の筋肉に作用して乳汁を乳管に搾り出す。子宮収縮を促す。

妊娠中に母乳を作るための準備が始まります。妊娠3ヶ月を過ぎると胎盤で作られる女性ホルモン(胎盤性エストロゲン、胎盤性プロゲステロン)によって乳腺や乳管が発達し母乳産生の準備が進み、妊娠後期になると母乳が乳腺に充満し始めます。しかし同時にこれらの胎盤で産生される女性ホルモンは赤ちゃんが産まれるまでプロラクチンが乳腺の細胞に作用しないように働きかけて母乳分泌を抑えます。
お産が終わり胎盤が子宮から出てしまうと、胎盤で作られていた女性ホルモン(胎盤性エストロゲン、胎盤性プロゲステロン)が急速に減少し、プロラクチンが乳腺に作用出来るようになり乳汁産生が始まります。さらに赤ちゃんが乳首を吸う刺激によってオキシトシンというホルモンが分泌されて乳腺内の母乳は乳管へ分泌されて赤ちゃんの口の中へ排出されます。
 
   
初乳と成乳 分娩後3日間頃まで分泌される母乳を初乳といいます。初乳から移行乳を経て産褥2週間ほどで成乳へ変化していきます。初乳は黄色っぽくややどろどろした感じがあり、赤ちゃんに必要な免疫機能を補う働きがあります。特に初乳に含まれる免疫物質のIgAは赤ちゃんの小腸に留まり病原性のある腸内細菌から守る働きがあるといわれています。一方成乳は白色くさらさらした状態で、赤ちゃんの成長を担います。脂肪分や乳糖が多く高カロリーです。
   
母乳栄養の特徴 母乳育児は赤ちゃんにとって、栄養価や免疫機能を補うことに関して優れていることは当然のことです。しかしお母さんの病気、内服薬や嗜好品によっては赤ちゃんに害を及ぼすこともあります。妊娠中と同じように授乳中にもお母さんは十分な注意を払う必要があります。

母乳育児の利点
1)お母さんの愛情が赤ちゃんに伝わる。
2)オキシトシンの分泌増加によって、子宮の収縮がよくなる。
3)母乳は生物学的、栄養学的に優れている。
4)お母さんの持っている免疫機能を赤ちゃんに伝えられる。
5)避妊効果がある。
6)経済的に優れている。
7)赤ちゃんの中枢神経発達促進に役立つ。
8)乳幼児突然死症候群の防止に役立つ。
9)赤ちゃんのインスリン依存性糖尿病の予防になる。
10)お母さんの乳がんの減少に役立つ。

母乳育児の問題点
1)赤ちゃんにビタミンK欠乏性出血症を起こす可能性がある。
2)母乳性黄疸(おうだん)を起こす。
3)赤ちゃんが母乳で感染する病気がある。
4)お母さんが内服している薬が、母乳で赤ちゃんに移行してしまう。
5)お母さんの嗜好品(たばこ、お酒、コーヒー、紅茶、お茶など)に含有するニコチン、アルコール、カフェインなどの母乳への移行。

問題点の解決策
ビタミンK欠乏性出血症 ビタミンKは腸内細菌によって作られますが、赤ちゃんは腸内細菌が少ないためにビタミンK不足になります。ビタミンKシロップを赤ちゃんに投与することで予防します。他には、お母さんが納豆や緑黄色野菜を多く取ることで母乳中のビタミンKが増加するといわれています。

母乳性黄疸 生後1週間程で出現する遷延性黄疸です。通常後遺症などのない生体の合目的反応ですが、ビリルビン値が20mg/dlを超える場合は他の病気との鑑別が必要になります。

母乳で感染する病気 ほとんどがウイルス感染症です。

単純ヘルペス (ほとんどは正常分娩時に産道で感染しますが授乳時に接触感染することもあります。母乳自体で感染したという報告はありません)

サイトメガロウイルス (妊娠中、分娩中、授乳中それぞれ感染する可能性がありますが、母乳育児を続けることで感染が成立するといわれています)

成人T細胞白血病ウイルス (赤ちゃんへの感染経路が唯一母乳といわれています。ただ母乳中のウイルスの量が極めて少ないため100%母乳を禁止せず生後3ヶ月〜6ヶ月かんの期限付きで母乳育児を行い、以後人工乳へ切り替える方法をとる場合もあります)

HIV (赤ちゃんへのHIV感染は分娩前後に起こってます。母乳育児もその危険性を増加させているため、母乳を禁止せざるを得ません。)

薬が母乳で赤ちゃんに
移行してしまう
ほとんどの薬はその添付文書に授乳中の新生児への影響や安全性は確立していないため母乳育児を控えるようにと書かれています。しかし内服している薬の種類にもよりますが、お母さんの内服時間と母乳中への移行時間の関係を調べることによって授乳が可能な場合もあります。

嗜好品の母乳への移行 授乳中の喫煙によりニコチンが母乳中へ移行し乳幼児突然死症候群が増加するという報告があります。
お酒は、飲酒後1時間以内に母乳へ移行します。長期間高濃度のアルコールが母乳中に持続すれば赤ちゃんはアルコール中毒になることがあります。また飲酒量が多いとプロラクチンの分泌量を減少させるため乳汁分泌量が減少してしまいます。
コーヒー、紅茶、お茶、コーラなどに含まれるカフェインは母乳中に移行し赤ちゃんを興奮状態にする可能性があります。


アレルギーについて 母乳がミルクアレルギーを予防する意味では、最も良い治療法であることは良く知られています。しかし赤ちゃんの3ヶ月健診の調査から粉ミルクと母乳を比べると、母乳栄養にアトピー性皮膚炎の赤ちゃんが多いという報告もあります。これは、母乳は雑食の人間からの乳汁であるため多くの抗原が「母乳」に含まれることを考えれば当然のことかもしれません。母乳栄養で防げないこともあるということであり、母乳栄養が赤ちゃんにとって最善の栄養であることには変わりありません。さらに、近年は環境因子(環境ホルモンなど)の問題もあり、母乳育児が最良であると言い難い環境に住んでいることも忘れてはなりません。

* B型肝炎とC型肝炎は、母乳育児で赤ちゃんへ感染することはありません。
   
母乳と粉ミルクについて(成乳) 現在販売されている粉ミルクは、メーカー間の差はわずかであまり変わりありません。また成分も母乳に近く調整されていますし、必要に応じて母乳に含まれる量が少ない物質を補うように添加されているものもあります。

粉ミルクの調整
たんぱく質 牛乳は母乳の3倍近いたんぱく質が含まれカゼイン乳清の比率も異なります。そこでカゼインを減らし乳清たんぱく質を増やして母乳と同じ量と比率に調整しています。また赤ちゃんの脳神経系の発達に必要なタウリン、乳児にとって必要な必須アミノ酸のシスチンが増強されています。またアルギニン・αラクトアルブミンなどの強化、牛乳アレルギーの原因となるβラクトアルブミンの減量なども行われています。

脂肪 牛乳の脂肪構成成分や脂肪酸パターンは母乳と異なっているため調整されています。植物油脂や魚油などに変換されていたり、リノール酸・αリノレン酸・γリノレン酸・ドコサヘキサエン酸(DHA)などが強化されています。さらに神経発達に有用なあらきどん酸、生体膜の構成成分のリン酸なども配合されています。

糖質 母乳と同じ乳糖中心に構成されています。さらにお腹の中のビフィズス菌の繁殖を促進させるオリゴ糖が加えられています。

ミネラル 牛乳では、赤ちゃんの腎臓に対する負荷が大きいため、電解質濃度を調整しています。さらに鉄・銅・亜鉛・マンガン・マグネシウムなどの微量元素も加えられています。

ビタミン 母乳にも多くのビタミンが含まれていますが、ビタミンC、D、Kが不足しがちなため、粉ミルクではこれらが必要量に調整されれています。またビタミンAの原料であるβカロチンや細胞の増殖に重要なイノシトールも加えられています。
   
混合栄養について 混合栄養とは、赤ちゃんに母乳と粉ミルク両方を与えることです。原則としてお母さんが何らかの原因で母乳を十分に与えられない場合に粉ミルクで不足分を補います。母乳が足りているか不足しているかの判断はなかなか難しいですが、以下のような場合は母乳不足を考慮する必要があります。

1)授乳に30分以上かかる
2)授乳後1〜2時間でミルクをほしがる
3)便や尿の回数が少ない
4)体重増加が悪い
5)お母さんのおっぱいが授乳時間になっても張ってこない

おっぱいの出が悪いからといっても、生後2週間以内は粉ミルクを単に補うのではなく頻回哺乳を行い、赤ちゃんに乳首を吸ってもらう刺激で母乳分泌を促すことも大切です。母乳不足を感じて混合栄養にする前に、主治医と必ず相談してください。赤ちゃんに何らかの病気などがあり体重増加が悪い場合や哺乳力が低下していることもあります。また生後1ヶ月ごろから母乳分泌が良くなることもあります。あきらめずに根気良く母乳をあげ続けることが大切です。

混合栄養のやり方について
1)母乳を飲ませた後に粉ミルクを追加するのが一般的です。
2)母乳は午後になると不足しがちなため、午後の1回のみ粉ミルクを与える方法もあります。
3)母乳と粉ミルクを交互にあげる方法もありますが、乳汁分泌刺激の面からはあまり望ましくありません。
4)生後数ヶ月経ってお母さんが職場復帰する場合は、日中の数回を粉ミルクにせざるを得ませんが、出勤前と帰宅後は必ず母乳を与えてください。さらに母乳分泌が良いときには、日中に搾乳して母乳パックなどで冷蔵(冷凍)保存して、帰宅後に与えることも考慮してください。
 
   
調乳方法の注意点 一般的な粉ミルクの作り方の注意点を記載します。ミルクの作り方は、お買いになった粉ミルクの注意書きなどを必ずご確認ください。
哺乳瓶・乳首・乳首入れ容器など授乳に必要なものは、毎回必ず消毒をしてください。ご自宅での消毒方法は、煮沸消毒(お鍋などに十分な水を入れ、授乳に関するのもすべてを入れ火にかけて沸騰させます。)や薬物消毒(ミルトンなどの消毒液につけて置きます。)などが良いでしょう。
粉ミルクを溶かすお湯は、一度沸騰させたお湯を40℃位に冷ましてから使ってください。出来たミルクは必ず温度を確認してから赤ちゃんにあげてください。熱いと、赤ちゃんはヤケドしてしまいます。
開封後の、ミルク缶は、乾燥した涼しい場所に保管しましょう。冷蔵庫などで保管すると粉ミルクが湿気で固まってしまうため止めてください。また開封後は1ヶ月以内に使い切ってください。大きな缶のほうが割安感はありますが、使用量を考えて小さな缶をこまめに開封するほうが安全かもしれません。
 

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