| 帝王切開術後の経腟分娩は、Vaginal Birth after cesarean-section:VBACと呼ばれています。その成功例は医療機関によって若干の考え方の相違や条件によって異なりますが、60〜80%といわれています。最も問題になることは、前回帝王切開を行った子宮の傷が陣痛によって破裂する可能性がある事で、その頻度は0.1〜1%です。   | 
    
    
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      | 歴史 | 
      以前は、日本や欧州ではVBACは標準の分娩様式として採用されてきました。それに反してアメリカでは、1980年代後半安全性が確認されたとして多施設でVBACが行われましたが、1991年にその危険性を指摘する論文が発表されてVBACに対する見直しがされました。ACOG(アメリカ産婦人科学会)の見解は、1988年「特に禁忌となる理由のない限り、経腟分娩を試しみるよう働きかけるべきである。」と積極的に推奨していましたが、1999年の見解は「特に禁忌となる理由のない限り、VBACの候補となる。」という見解に変わりました。
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      | 危険性 | 
      ★VBACに適さない場合 
       @前回の帝王切開術が、合併症など母体の原因で行われた場合 
       A児頭骨盤不均衡(骨盤が狭くお産が出来ない)で帝王切開術をした 
       B軟産道強靭(子宮口などが硬くお産が出来ない)で帝王切開術をした 
       C子宮筋腫や子宮の奇形があり帝王切開術をした 
       D高年妊娠で帝王切開術をした 
       E妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)で帝王切開術をした 
       F前回の帝王切開術後からの期間が短い 
       G帝王切開術直後に子宮などに感染して発熱した既往がある 
       H2回以上の帝王切開術を受けている 
       Iその他担当医師から注意を受けている場合(前回、子宮縦切開施行など) 
       
      ★VBACの危険性 
      @子宮破裂の診断(早期発見) 
       分娩進行中の胎児心拍数をモニターすることで判断し、胎児心拍数が徐脈(心拍数低下)が起きた場合は、即座に帝王切開術に切り替えます。 
       
      A子宮破裂の可能性 
       2回以上の帝王切開術を受けている場合と前回子宮縦切開施行例(通常は子宮を横に切開します。)が一番危険で、発生頻度が4〜9%です。 
       
      B子宮破裂後の状況 
       母体 : 子宮摘出手術になる可能性も高く、膀胱損傷、尿管損傷、消化管損傷などもあり、さらに死に至ることもあります。 
        
       胎児 : 胎児死亡、脳性麻痺、神経学的後遺症 など 
       
      「子宮破裂」について詳しくは・・・→ こちらへ 
       
      ★緊急帝王切開術に切り替える場合 
      子宮の前回帝王切開術の傷が陣痛に耐えられずに破裂しそうなときに切り替えます。症状は次のような場合です。 
       
       @前回手術の傷に一致した子宮の持続的な痛み。 
       A原因不明な血尿があったとき 
       B子宮の収縮輪の出現(子宮がヒョウタンのような形になる)したとき 
       C胎児の心拍が異常なパターンになったとき 
       Dその他、胎児や母体に通常の分娩進行と異なった症状が認められたとき 
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      | VBACの成功率 | 
      前回の帝王切開術が、分娩中の胎児の状況変化により行われた場合成功率は高いようです。しかし、母体側の原因で行われた場合は比較的低くなり、医療機関によって若干の相違がありますがVBACの成功率は、60〜70%という報告もあります。言い換えれば30〜40%は、緊急帝王切開術になるということもお忘れなく。VBAC中の微弱陣痛に対しても、陣痛促進剤(オキシトシン)を胎児の心拍数をモニタリングしながら注意深く使用すれば問題ないという報告もあります。 
      帝王切開術で出産されたことのあるお母様は、術後の痛みなどを経験されて「今回は自然に産みたい」と希望されると思いますが、前回の帝王切開術と今回の妊娠に危険因子が無いからといって、むやみにVBACを希望されるのはお奨めいたしません。主治医とよくご相談のうえで最善の方法で元気な赤ちゃんを安全にお産み下さい。  
       
      帝王切開術に関して詳しくは・・・→ こちらへ  |