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 播種性血管内凝固(DIC) 
 血液中には相反する血液を凝固させる物質(因子)と、逆に溶かす物質(因子)があります。
通常ではこれらがバランスよく作用しあって平衡状態に保たれています。
妊娠中は、分娩時の出血に備えるために凝固させる因子がやや多くなり凝固亢進状態でかろうじて平衡状態を保っていますが、多量出血などが起こるとこの平衡状態が崩れて血管内で過度の血液凝固と過度の血液溶解が同時に起こり、全身の臓器内で微小な血液凝固と出血傾向の両方が同時に起こってしまいます。
産科領域でのDICは、他科領域に比べて発生頻度が非常に高く、病状の進行も非常に早いため母体死亡の原因になりやすいです。
 
   
  通常の状態                          妊娠中の状態
 
DICの原因になる基礎疾患 お母さんの循環障害と関わりが深く、分娩時などで2000ml以上の出血があると起こりやすくなります。

  病名 
超急性 羊水塞栓症 頻度は非常に少ないですが、発症すると病状の悪化は非常に早いです。
急性 常位胎盤早期剥離 産科DICの原因として過半数を占めます。
出血性ショック 産科出血は妊産婦死亡の第1の原因で、弛緩出血は全分娩の10%に及びます。
妊娠性急性脂肪肝 肝臓で血液凝固抑制物質(AT-V)の産生量が減少します。 
子癇・HELLP症候群 血管内皮細胞障害が起こり、壊死組織から出る組織因子が全身に広がります。
亜急性 重症感染症 感染性流産・羊膜絨毛膜炎・産褥熱などで、敗血症性DICが起こります。
慢性  重症妊娠高血圧症候群 常位胎盤早期剥離・子癇・HELLP症候群などを合併しやすく慢性的な前DIC状態です。
死胎児症候群 壊死胎児や壊死胎盤の組織因子が全身に広がります。
 
凝固因子と組織因子 凝固因子
血液凝固に関係する物質で、これらが働くと血液が固まります。第T〜X因子、第Z〜]Vまであります。(第Y因子は欠番です)
第T因子はフィブリノゲン
第U因子はプロトロンビン
第V因子は組織トロンボプラスチンと呼ばれています。

組織因子
第V因子(組織トロンボプラスチン)のことで、脳・肺・胎盤などの血管の内皮細胞に多くあります。血管が切れたときなどに、血管外から血管内に入って血液を固めて止血する(外因性凝固)働きがあります。血液を凝固させる働きが他の因子よりも強いため妊娠中は血栓を作りやすく、産科DICの原因となります。
   
症状 妊娠中や分娩時に異常出血があり、突然サラサラした固まらない出血に変わった場合「播種性血管内凝固(DIC)」を考えます。 

  血管内凝固亢進

上記の基礎疾患などによってお母さんの身体の一部に障害が起こると、組織因子(組織トロンボプラスチン)が身体の中に放出されます。
今までバランスを保っていた凝固因子と溶解因子のバランスが崩れて、突然全身の血管内の血液が固まり始めます。

   


血管内で血液凝固が異常に
亢進してしまいます


何度も繰り返します


凝固した血液を必死で
溶解しようとします

血液凝固因子の消費

血液凝固が亢進すると、それを溶かそうとする生体反応(溶解因子)が起こりますが、次々に血液凝固が進んでしまい体中の凝固因子や血小板を消費し続けます。
       

全身の血小板や血液凝固因子を使い果たしてしまいます
消費性凝固障害

全身の凝固因子や血小板を使い果たしてしまうと、全身の血液が固まらなくなってしまいます。この状態が「播種性血管内凝固(DIC)」の最終段階です。

 
治療 DICによる全身ショック状態の改善と、原因となった疾患の治療や出血を止める治療を平行して行います。産科DICでは原因疾患の治療に手術的治療が可能な場合が多く、早期に躊躇せずに行います。

 1)ショック状態の治療 「ABC]または「ORDER」
  ・O:oxygenate(酸素投与)
  ・R:restore circulatory volume(循環血液量の回復)
  ・D:drug therapy(薬物療法)
  ・E:evaluation(評価と判定)
  ・R:remedy the basic problem(基本的問題解決)

 2)基礎疾患の治療
  ・妊娠中であれば、妊娠を中止(分娩または人工妊娠中絶)
  ・胎児死亡であれば、子宮内容除去
  ・分娩後の出血であれば、子宮摘出術
  ・感染があれば、感染巣の除去

 3)抗DIC療法  DICによって消耗された物質や炎症所見の治療を行います。
  ・補充療法     新鮮凍結血漿や濃厚血小板などを輸血して消耗された凝固因子などを補充します。
  ・酵素阻害療法  AT−V(アンチトロンビン)、合成抗トロンビン薬剤などを用いて、血小板の凝集などを抑制します。
 
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